スナーダイクマエ孤児院・農場運営に係わる技術指導     
 

農業専門家 大東宏先生

 

財)日本国際協力財団の大東 宏 農業専門家は、2005年2月下旬から3月上旬にかけての2週間、スナーダイクマエ孤児院・農場運営に関する技術指導を行った。

カンボディア国は、約8割の国民が農業に係わっている農業国であるが、古代からの農地分散型の風習によって、経年、必然的に極小農が多発し、大多数の農家の産物は自給自足用に生産されているに過ぎない。
そのため自家生産された農産物は、地場市場に出荷されるゆとりが無いので、多種類の農産物が近隣諸国から輸入され、貧困民でさえ輸入産物を買い,食せざるを得ない。このような当国農業及び農産物消費の実情から、外貨獲得手法や1次、2次輸出産物の無い同国の国家経済は破産状態にある。

心温かい個人や組織の支援によって運営されている当院の孤児達の食生活を向上していくには、所持されている農園において、農産物自給のための生産活動を行うべきであろう。
同院の孤児達は、自分が孤児に至った経緯や幼児期からの過酷な体験あるいは地場市場、商店、友人、知人などからの諸情報によって、緊迫化しつつあるこのような身近で貧困な食に関する国家事情を会得している。

孤児達が、自分の将来における希望を語る時、「農業学校の先生になりたい」、「農家に進歩的な農法を教える人になりたい」、「農村指導者になりたい」、「食べ物を作って、人に与えるような仕事がしたい」などと云っている事実から、当該専門家と孤児院スタッフは、孤児達の希望に沿えるような実地研修型農場運営に関する企画を考案し、実践すべきであろうとの結論に達した。
とりあえず孤児全員が参画できる鶏飼育法を学ばせ、実践させるために、3月上旬、孤児達に経費節減型の鶏舎を建設させ、安価で優れた系統の産卵期に近い200羽の成鶏を探索して導入した。ほとんどの鶏が、飼育開始1ヵ月後から卵を産んでいる。
次回の派遣実施計画の目的としては、自給自足型野菜栽培法の技術指導である。現在、野菜の種類とその育苗法の準備を遂行中である。


 

今回の鶏の導入と飼育法の伝授、さらに次回の野菜栽培法の技術移転によって、当該農業専門家、孤児院スタッフそして高学年孤児達の間に、下記のような共通認識が得られつつある。

1.孤児達の成長に必要な植物性及び動物性蛋白質、ミネラル、ビタミン類などを鶏卵、鶏肉、野菜類の自給生産で賄うことができる。さらに鶏糞、野菜残渣などの利活用による有機農法で野菜栽培を行う。

2.孤児達が高度な農業技術を習得することによって、小農にしかなれない孤児による集約的な家畜の飼育や野菜生産が可能になり、自給自足とともに余剰農産物を販売することができるようになる。

3.自家生産した余剰農産物の販売、換金作物の導入などによって、現金収入を得て、生活に余裕が生まれ、老化した親を養い、また弟、妹を学校に行かせることができるようになる。さらに通院も可能となり、医薬品なども購入できるようになる。

4.現在、輸出産物がなく、しかも多くの農産物輸入に依存しているカンボディア国が、将来、農業立国として、あるいは農産物輸出国に成長するには、多くの農業教育者、農業技術者が必要である。孤児達がそれらの対象者となるであろう。

5.望むらくは、孤児達が余剰農産物を地場市場に出荷して、その販売代金が孤児達の教材費の一部に当てられるよう、家畜飼育と野菜栽培に向けて努力する。
連日の鶏飼育、採卵、野菜栽培、収穫、出荷などの農作業努力によって、孤児達の金銭感覚が養われ、自立精神が育成される。

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